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グレン・グールドについて

Gould Bach今回は以前の記事で何回か触れていたグールドについてお話しします。実は、以前私がアナハイムのNAMMショーを訪問した際、NI社のブースでグールドによるバッハの曲を聴いたことがあります。これはTRAKTOR SCRATCHのプレゼンのときでしたが、バッハのピアノとDJのスクラッチを合わせたもので、未だにグールドによるバッハ演奏の影響力があるのだなと感心しました。そんなグールドとは、どんな人物なのでしょうか。

彼はカナダ生まれのあまりにも有名なピアニストで、バッハ演奏で非常に評価が高く、死後も未だに多くのアーティストから賞賛を受けています。日本の某小説家も評していますが、彼のバッハ演奏は簡単に言えばとにかく「格好いい」、それに尽きると思います。

現代的な解釈からの彼のバッハ演奏は、音楽ジャンルを問わず多くのファンが存在しています。ですが、それだけでは言い尽くしたことにはならないでしょう。彼の演奏はバッハを現代的な視点から読み換え、新たな魅力を引き出しているのです。

それまでのピアノ演奏は「ロマン主義的な」影響が濃い演奏が主流でしたが、彼はそれを排除し、ピアノ演奏の新たな演奏スタイルを確立したとも言えます。彼の演奏を実際に聴いてみれば分かると思いますが、「テンポに非常に乗っていて単純に聴いていて気持ちいい」という印象を受けると思います。さらに言えば、彼の演奏は非常に「乾いていて即物的な」演奏だという印象を受けるでしょう。

ピアノ演奏というと、非常に甘く、ロマンチックな曲を連想される方が多いかと思いますが、彼の演奏はそうした印象があまり見えてきません。生涯、ショパン、リストなどを「意図的に」拒んできたグールドでしたが、バッハ演奏を聴けばその説得力に驚かされ、バッハの曲、つまりはグールドが演奏している曲の虜になることでしょう。シューマンがかつてバッハの曲を「男性的な」音楽と評していましたが、まさにその「男性的な」でかつ「デモーニッシュな」バッハ像がグールドの演奏で見えてくると言えるでしょう。

さきほど「即物的な」という表現を用いましたが、これは賞賛の意味も含まれています。とかくクラシックの音楽となると、自然や風景などを音に表すと思いがちですが、彼の演奏は「音そのもの」から引き出される魅力をそのままリスナーに伝えているとも言えるでしょう。バッハ自体がその後の作曲家とは異なり、非常に曲自体のテクスチャや構造を気にして作曲する、「抽象的な」音楽を作る作曲家だとは言えますが、その魅力がグールドを通して余すところなく発揮されています。音楽は何かの対象(自然、感情など)を表現するのではなく、音そのものに魅力があり、その音のテクスチャが「心に響く」というよりは、それを「肌で感じ取る」ことができるのだということを彼は証明したかったのではないでしょうか。

彼のモーツァルトのピアノソナタの演奏は、非常に物議を醸し出した事件と言えますが、その彼の「即物的な」態度が非常に現れているものだと言えます。彼はこの録音を「モーツァルトのバロック化」を目的としているとも言っています。従来までの解釈では速く弾く曲を、馬鹿にしたように極端に遅く弾き、今まで非常にロマンチックに捉えられてきた曲を極端に速く弾いてしまい、ロマンをぶち壊してしまう。普通のモーツァルト・ファンであれば、毛嫌いする演奏であり、この演奏で反逆児としてのグールドの側面が垣間見れるとは思いますが、その曲を聴いてみれば、彼は彼なりのロジックでこの演奏に到達したのであり、反逆心のみで行ったことではないということが分かり、説得力あふれる演奏となっています。

Native Instrumentsのデモンストレータがグールドのバッハの曲をDJに組み込んだ理由がここにあると思います。聴いてみたことがない方は、一度聴いてみてはいかがでしょうか。


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